Methodologyを書く練習

Methodologyを書く練習をしよう!

Methodologyを書くための練習

ここでは、Introductionの時と同じやり方で、Methodologyを書く練習をしてみましょう。

 

繰り返しの説明になりますが、例のMethodologyを読んで、筆者が何をしているか書いていってください。ただし、その論文に特有な具体的な内容にならないようにしましょう。最初は、完璧にやろうとせず、練習なので自由に進めてみてください。

 

Changes in the chemistry of groundwater in the chalk of the London Basin

((Methodology))
(1) The current investigation involved sampling and analysing six sites to measure changes in groundwater.
→(1)の文章では、著者は何をしているか?
筆者は、この章の概略を述べ、研究の目的も示している。

 

(2) The sites were selected from the London Basin area, which in located in the south-east of England and has been frequently used to interpret groundwater evolution [2,3,4].
→(2)の文章では、著者は何をしているか?
筆者は、研究の背景となる情報を与え、前研究から研究手法の選択の妥当性を説明している。

 

(3) A total of 18 samples was collected and then analysed for the isotopes mentioned earlier.
→(3)の文章では著者は何をしているか?
筆者は、研究手法そのものについての概要を説明している。

 

(4) Samples 1-9 were collected in throughly-rinsed 25ml brown glass bottoles which were filled to the top and then sealed tightly to prevent contamination.
→(4)の文章では著者は何をしているか?
著者は、研究で何を行ったかを具体的に説明し、その際に細心の注意を払ったということを説明している。

 

(5) The filled bottles were shipped directly to two separate laboratories at Reading University, where they were analysed using standard methods suitably miniaturised to handle small quantities water [5].
→(5)の文章では著者は何をしているか?
著者は、研究で何を行ったかを具体的に説明し、その際に注意を払った点をアピールしている。

 

(6) Samples 10-18 were prepared in our laboratory using a revised version of the precipitation method established by the ISF Institude in Germany [6].
→(6)の文章では著者は何をしているか?
著者は、過去の研究例を引用して、自分の研究手法を説明している。

 

(7) This method obtains a precipitate through the addition of BaCl2-2H2O; the resulting precipitate can be washed and stored easily.
→(7)の文章では著者は何をしているか?
著者は、より詳細な情報を提供し、その手法が良い選択だとアピールしている。

 

(8) The samples were subsequently shipped to ISF for analysis by accelerator mass spectrometry (AMS).
→(8)の文章では著者は何をしているか?
著者は、より詳細な手法の情報を与えている。

 

(9) All tubing used was stainless steel, and although two samples were at risk of CFC contamination as a result of brief contact with plastic, variation among samples was negligible.
→(9)の文章では著者は何をしているか?
著者は、手法における考えられる欠点を述べている。

 

 

解説

 

文章(1)

「どうしてMethodologyの概略を紹介するのか?」
時々研究手法や研究対象をいきなり説明し始める論文を見かけますが、これは読者が自分と似たような研究を行っている場合には、問題ないでしょう。しかし、そうでない場合には、研究手法や研究対象の概略の説明から入るほうが、より好ましいでしょう。そのほうが、一般的な読者は、Methodologyの内容を理解、イメージしやすいです。

 

ここで、Methodologyの章の最初の概略説明において一般的な内容を紹介します。

  1. 研究で出てくる数字を紹介しながら、概略を説明する。例えば、テスト回数、実験回数、使用した素材の種類、使用したソフトウェアの種類など。そして、最後に、研究の目的をここでも改めて説明する。
  2. 研究対象についてのバックグランドとなる情報や研究素材や研究機器の出どころを説明する。
  3. 前節の情報を再度繰り返す。例えば、研究の目的や研究で期待する結果について説明する。

Methodologyにおいて、詳細な説明に入る前に、どのような研究手法、実験手法であるか概要、全体像を示すことは大変重要です。最初から細かな議論、説明が続くと、内容の難易度によっては、全体像がつかめない読者が出てくるかもしれません。ですから、読者にまずは簡単な概略を説明し、そこから個別の詳細な説明に進めるようにしましょう。

 

文章(2)

「どうして自分が行った研究の妥当性の説明が必要なのか?」
あなたにとっては、自分の研究の手法、内容の選択理由は明らかかもしれません。しかし、読者にとっては常に明らかであるとは限りません。もし、自分の使った手法の理由をうまく説明できなければ、読者はあなたの研究結果について受け入れられなくなってしまうかもしれません。「どうしてそのような方法をとったんだろう?」「どうしてそういった研究対象を選んだんだろう?」といった疑問を持ったままで論文を読み進めるようでは、あまり良い印象は持たれず、最終的な論文の評価に影響してきてしまいます。

 

「背景となる情報を現在形で表す」
例えば、あなたは、ある特定の性質の為に、研究対象となる物質を選んだとします。そうした時には、その性質が何なのかを説明することになります「This material is able to ...」。もしくは、何ができるかによって、特定の装置、ソフトウェアの仕様を決めたかもしれません。その時には、それがなんであるかを説明します。文章(2)では、過去の研究内で、選択した研究対象となる地域が適切だと説明されているために、筆者が同じ対象地域を選択したことがわかります。

 

文章(3)

「Methodologyの章の概要を説明しているのに、どうして研究手法自体についてもう一度説明をするのか?」
前にも説明をしましたが、章の初めには、新しいトピックスについての何かしらの情報を提供するのが一般的です。ですから、章の初めには、ほとんどの場合、章の概要説明が付きます。そして、さらに研究手法についての概要説明が続きますが、当然内容は重複しないようにします。文章(1)の所でも言いましたが、細かな議論、説明に入る前に、簡単な全体像を示しておくと、読者の理解の大きな助けとなります。

 

文章(4)

「どれくらいの詳細を説明するべきなのか?」
もし、あなたの論文の読者がその研究内容に詳しいかどうか自信がないときには、少し詳し過ぎるくらいの説明をするようにしましょう。論文を書いたあなたは、全ての内容を完璧に理解しているので、そのことで説明がおろそかになってしまうことがあるかもしれません。常に、読者が全てを理解し、あなたと同じ結果を再現できるかどうかを意識しながら、必要十分な内容を盛り込むようにしてください。

 

「時には読者に訴えかける表現を!」
論文は普通、事実を淡々と述べるものだと思われています。実際、論文は、小説などとは大きく異なり、表現にこだわりを持つ必要はありません。但し、自分のアピールしたいところは、読者に訴えかける表現をうまく使っていかなければなりません。例えば、例文の中で使用されている
throughly
filled to the top tightly
等の副詞は、まさにこうした訴えかける表現です。あなたが論文を書く目的は、自分の主張をただ単に述べるだけでなく、読者にあなたの主張を受け入れてもらうことにあります。ですから、Results&Discussionに入っていく前の段階で、論文の内容に不信感を持たれてしまわないように、研究手法を適切に説明し、さらに、アピールしなければならない部分は、上手く表現していくことが大切です。

 

文章(5)

ここでは、文章(4)とほぼ同じ内容となっています。ここで、
directly
という副詞がアピールの言葉となっています。

 

文章(6)

「どうして過去の研究例を引用したほうが良いのか?」
現実的には、全ての研究があなた自身のアイデア、オリジナルというわけではなく、過去の様々な研究の流れの中で、現在の研究テーマがあるという場合がほとんどです。そのようなときには、あなたの研究所法は、これまでの研究の中で使われてきた手法の上に立っているので、その点は適切に引用をしましょう。引用されるような研究内容は、よく知られている内容であることから、それほど詳細に説明をする必要はありません。その代り、きちんとリファレンスを付けて、読者が調べられるようにしてあげましょう。

 

「リファレンスを付ければ、研究手法の説明はいらないのでは?」
リファレンスを付けたとしても、やはり筆者は、基本的な手法の内容は示さなければなりません。読者の置かれている環境によっては、簡単に図書館や、インターネットを通じて、リファレンスの論文を読むことができるとは限りません。論文を書くうえでの最低限のマナーとして、基本的な内容は記述し、詳細はリファレンスに譲るという形にしましょう。

 

また、過去の研究例を示すことは、自分の研究手法のどこがこれまでと同じであるかを説明するだけではなく、どこが違っていて新しい部分なのかを表すのに大変重要です。あなたの研究が、過去の研究と同じ部分、似ている部分、違う部分をはっきりと明示することで、あなた自分の貢献している部分がアピールできます。

 

「研究手法の説明のし過ぎに注意!」
研究手法に関しては、できるだけ詳しく書いたほうが良いと言いましたが、もし、研究テーマが新しい研究手法の開発というような時には、この章で詳しく書き過ぎると、Result&Discussionの章で議論する内容がなくなってしまうので注意が必要です。必要十分な情報は伝えるべきですが、自分のこだわった研究手法は、Resultsの章でももう一度しっかりアピールしても良いと思います。

 

文章(7)

手法の選択の正当化は、この章において最も大切な部分の一つです。しつこくなり過ぎなければ、何度アピールしても構いません。逆に、あなたの研究手法に対する批判や他の手法の選択の可能性をはねつけるだけの正当化が出来なければ、論文自体の説得力が大きく損なわれてしまうことを覚えておいてください。

 

文章(8)

この文章は、単純に手法に関する具体的な説明をしています。

 

文章(9)

「問題点などはResults&Disucussionで言うべきなのでは?」
最終的な結果に影響を与えない問題点はMethodologyで紹介しておきます。この時必要であれば、研究により得られた結果を軽く紹介し、問題点があるが、結果には影響がないことを説明しましょう。

 

「そもそも問題点は言わなくてもよいのでは?」
問題点があるのであれば、きちんと言うべきです。もし、そこで言っていなければ、読者からは、あなたが問題点に気付いていないと思われる可能性があります。そうすると、あなたに対する信頼、また、研究結果に対する信頼を失ってしまうことになるので、問題は無視したり、隠したりせずに、正直に言及し、結果には影響を与えないことを説明するようにしましょう。

 

「問題点を述べるときにネガティブな印象を与えないようにする」
問題点をうまく説明するためのボキャブラリーを使うようにしましょう。そうすることで、問題に対する印象をネガティブになり過ぎないようにし、良い側面に注目してもらうようにします。そして、問題に対する解決策を提示することができれば、さらに良いでしょう。上の例文では、筆者は問題があることを正直に言及していますが、それに対して、大きな問題ではないこともしっかりとアピールしています。
variation among samples was negligible...
こうした表現、ボキャブラリーは、Methodologyで使うVocabularyで一度きちんと勉強してみてください。

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