Introductionを書く練習(1)

Introductionを書いてみよう

Introductionを書くトレーニング(1)

ここでは、Introductionを書く練習をしてみましょう。以下に示す論文のIntroductionのそれぞれの文章において、著者がどのような事をしたのか自分の言葉で書き表してください。

 

The synthesis of flexible polymer blends from polylactide and rubber

((Introduction))
(1) Polylactide (PLA) has received much attention in recent years due to its biodegradable properties, which offer important economic benefits.
→(1)の文章では、著者は何をしているか?
筆者は、自分の研究テーマの重要性を述べている

 

(2) PLA is a polymer obtained from corn and is produced by the polymerization of lactide.
→(2)の文章では、著者は何をしているか?
筆者は、読者に対して、研究について、もしくは研究対象の一般的な情報を与えている。

 

(3) It has many possible uses in the biomedical field[1] and has also been investigated as a potential enginnering material[2,3].
→(3)の文章では著者は何をしているか?
筆者は、文章(1)と文章(2)と同様に、研究の重要性と一般的情報を伝えている。ただし、ここでは、リファレンスを挙げながら、より専門的な内容に踏み込んでいる。

 

(4) However, it has been found to be too weak under impact to be used commercially.
→(4)の文章では著者は何をしているか?
著者は、問題点を指摘し、現在の研究が焦点を当てている点を説明している。

 

解説

 

文章(1)

ほとんどの研究者が、自分の研究分野やテーマが有用もしくは重要であることを訴えることから、論文をスタートさせます。その分野の論文の数についてや、その分野が重要な理由を述べたり、ただ単に「重要だ」というだけの論文もあるでしょう。

 

日本人の論文では、主張が控えめなものも見受けられますが、そこは遠慮せずに、堂々と自分の研究分野、テーマが重要である、有用であると主張してください。

 

「時制に関して」
時制は、現在完了形もしくは現在形が普通です。
Much study in recent years has focused on ... (現在完了形)
There are substantial benefits to be gained from ... (現在形)

 

文章(2)

この文章は、現在形で書かれています。つまり、内容が一般的に受け入れられた、もしくは、しっかりと築き上げられた事実だということを表しています。論文では、このように一般的に受け入れられた事実を紹介し、読者が筆者と同じレベルの基礎的な情報を共有できるようにすることが大事です。

 

「では、読者に紹介する一般的な内容とは具体的にどのようなものでしょうか?」

 

これは、もちろん、あなたがどのような読者に自分の論文を読んでもらいたいかによります。もし、あなたの論文が非常に専門的で、多くの論文の読者が、高いレベルのバックグランドをもっていることが期待されれば、専門的な内容の紹介から始めても構いません。一方、あなたが幅広い層の読者に論文を読んでもらうことを意識するならば、それ相応の基本的な情報を提供しなければなりません。

 

ここで、もし、過去の研究例からの情報を紹介する場合には、きちんとリファレンスを紹介するのを忘れないでください。

 

「伝えたい基礎的な情報が複数ある場合はどうするのか?」

 

その中から、最も一般的なものからスタートしてください。ほとんどの読者が知っているようなものから始め、徐々に専門的な内容に深めていくようにしましょう。この時、それぞれの文章内容を確認し、文のつなぎをしっかりと行い、情報が途切れ途切れにならないように気を付けてください。(Introductionでの接続詞の項目をもう一度勉強してみてください。)

 

「それでもやはりどのような情報を伝えたらいいか分からない?」

 

まずどのような内容を書いたら良いのかわからない場合は、あなたの論文のタイトルをもう一度見てください。論文のタイトルの中のいくつかのキーワードを丁寧に説明することから始めてみてください。

 

また、様々なレベルの読者になったつもりで、その読者がどんな情報が必要なのか、不足しているかをリストアップしてください。そのリストから、一般性の高い順番に簡潔に説明する文章を考えてみましょう。

 

「自分の解決したい問題点を説明するのはダメなのか?」

 

ダメではありませんが、ほとんどの研究者は、研究内容や分野の基礎的な情報を説明する前に、いきなり問題点の主張には入りません。まずは、研究分野についての周知を行い、読者が最低限の理解を得てから、自分の研究の内容に移っていきましょう。

 

文章(3)

「リファレンスを紹介する段落は別に作るべきでは?」

 

確かに、Introductionの中で、過去の研究例をレビューする章を別に作っている論文も多いですが、今回のような表現の仕方では、まだ一般的な事実の説明の域を出ていないので、リファレンス付きのこうした説明でも問題ないでしょう。過去の研究例をレビューする章では、個々の結果や実験方法などを具体的に議論し、もう少し長い説明になります。

 

「一般的な情報を提供する際に、リファレンスを付けるべきなのか?」

 

付けるべきです。理由は3つあります。
(1) 自分の研究結果と他からの引用をしっかりと分けることが、論文盗用などの誤解を避けることになります。こうした点もしっかりと考慮することが、世界的にスタンダードな論文の書き方です。

 

(2) 読者が必要であれば、リファレンスを読み、その研究分野の理解をより深めることができます。

 

(3) リファレンスを付けることで、筆者が、他の研究者の論文をしっかりと把握しているということをアピールできます。(ですから、リファレンスを付ける論文は、筆者自身がしっかりと読み、理解したものでなければなりません。)

 

「リファレンス文献の利用について」

 

論文を書く前には、多くのリファレンスとなる論文を集めることでしょう。そして、こうしたリファレンスを論文中に表記する際に、考えてほしい3つのポイントがあります。

 

(1) どの論文がIntroductionの中で、紹介されるべきか?
→Introductionの中で紹介されるリファレンス論文と、それらの著作は、あなたが研究している研究分野の中心的な存在であり、とても重要な研究結果であるべきです。読者が、こうしたリファレンス論文を読むことで、あなたの論文がどのよう位置づけにあり、研究分野の中で、その他の仕事とどのように関係しているかを知ることができます。ですから、あなたの研究分野において、影響力の大きな論文を中心に選ぶと良いと思います。

 

(2) どの論文を、過去の研究レビューの章に入れるか?
→既に述べたように、研究成果がよく知られており、事実として広く受け入れられている内容は、Introductionで紹介しましょう。一方、これまでの研究例のレビューでは、特に、最近、又は現在進行中の研究内容を紹介し、そうした研究の流れの中で、自分が行っている研究が必要で、重要であると主張していきましょう。このレビューでは、通常、過去形か、現在完了形を用いて、研究例を紹介します。

 

(3) どのような順番で、リファレンス論文を紹介していくか?
→この答えは、文章(6)の解説の中で行っていきます。

 

 

文章(4)

ここでは、まだ具体的な、詳しい問題点には言及しません。筆者は、現在注目していて、多くの研究者が興味を持てるように問題点の指摘をし、そして、そこからあなたが研究している特定のテーマへとうまく導いていきます。Introductionの最初の段階で、いきなりあなたの興味のある特定の問題点、研究内容について説明するは少し早急過ぎる感じがしてしまいます。

 

問題点を指摘する際に、参考となるリファレンスを付けても良いですが、もし、問題点が明らかな場合は、リファレンス無しでも問題ありません。

 

 

物質名やこの論文に特徴的な実験手法、データ名などは出さずに、それぞれの文章で著者が何を行っているか書いてみてください。では、続きもトライしてください。

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