Resultを書くためのモデル

Resultを書くためのモデル1

Resultを書くためのモデルづくり1

先程、紹介したResultのお手本例を参考に、Resultを書くためのモデルづくりをしてみます。

 

やり方は、他の章での手法と同じく、それぞれの文章が何をしようとしているのか、自分の言葉で説明していきます。ただし、あまり具体的、専門的な内容は入れずに書いてみてください。では、早速、一緒に取り組んでいきましょう。

 

Sentence1 and 2

(1) Data obtained in previous studies[1, 2] using a fixed on-site monitor indicated that travel by car results in lower CO exposure than travel on foot. (2) According to Okuno et al. (2006), the median exposure of car passengers was 11% lower than for those walking[2].

 

筆者は、他の研究者によって得られた発見、結論を紹介している

 

ここでは、なぜ自分の結果の紹介から始めず、他者の結果を紹介するのでしょうか?それは、通常は、あなたの研究が、従来の研究と関係があったり、もしくは延長上にあることが多いので、そういった研究の関係、流れを紹介しておいた方が、読者があなたのデータの細かな内容をより理解しやすくなります。この章がResultの章だからと言って、いきなり「Figure 1 shows ...」とデータの説明をし始めてしまうのは、あまり"reader-friendly"とは言えませんね。

 

章が変わった最初の文章は、研究論文とは言え、唐突な始め方をするのではなく、読み物としての流れを考えた入り方をする必要があります。その方法を2つご紹介します。

1. 現在の研究情勢の紹介

章が変われば、その章の最初において、Introduction的な文章から始めるのも良いでしょう。この時のIntroduction的な内容とは、読者がスムーズにあなたのデータを理解できるような助けとなるようなものにします。大抵の場合は、これまでの関係する研究で得られている結果を紹介するのが一般的です。行った実験が複数あり、それぞれを分けて説明していく際には、それぞれの最初に、こうしたIntroduction的な内容を入れていくと、よりReader-friendlyとなるでしょう。(但し、あまりくどくならないようにしてください。)

 

2. 前章までの内容を簡単に振り返る

あなたのデータを説明する際に、特に過去の研究例を紹介する必要がないと感じた時には、Result以前の章の内容を振り返るのでも構いません。

 

Sentence3 and 4

(3) In our study, modelled emission rates were obtained using the Traffic Emission Model (TEM), a CO-exposure modelling framework developed by Takahashi[3]. (4) Modelled results were compared with actual roadside CO concentrations measured hourly at a fixed monitor.

 

筆者は、自分の研究手法について振り返り、さらに情報を追加している

 

ここで、この説明を行うのは、もう一度研究対象や研究手法などを強調するためです。また、読者にとって、あまり馴染みのないテーマである可能性も考慮し、繰り返しの説明を入れてみてもいいでしょう。Methodologyの所では、単に研究対象、研究手法の説明だけでしたが、このResultでは、得られたデータを使いながらより、詳細な研究の内容を補足することもできます。Resultの章の後半になると、どうしても自分のデータの紹介、議論が中心となりますので、前半の内に、必要な基礎知識、情報を再確認しておくのは、とても大切なことです。

 

Sentence5

(5) Figure 1 shows the results obtained using TEM.

 

筆者は、図、表、グラフに注意を向けさせている

 

読者は、あなたのResultの章を上から読んでいっています。その中で、図や表、グラフなどの内容を確認してほしいときには、1つ1つ適切なタイミングで、読者の注意をそちらに仕向けます。今回の例のように「Figure 1 ...」となっていれば、図1の内容を確認し、それが終わると、また本文の方に戻ってきてくれます。もし、図1と2を同時にセットで確認してほしいときには、「Figure 1 and 2 ...」として、2つの図に注意を向けさせます。読者は、文章と図の間を行き来することになるので、混乱させることなく、適切な箇所で指示を入れるようにしてください。

 

また、得られた結果はどのような順番で示していくべきでしょうか?答えは、「重要なものから」です。もしかしたら、自分の中で説明のストーリーを作り上げて、最後に最も重要な結果を示したいと思うかもしれませんが、特に事情がない場合には、あなたの研究結果で重要なものから示していくのが良いでしょう。

 

Sentence6

(6) As can be seen, during morning peak-time journeys the CO concentrations for car passengers were significantly lower than for pedestrians, which is consistent with results obtained in previous studies[1, 2]

 

筆者は、特定の結果に言及し、それを他者の研究結果と比較し、説明している

 

先程も言いましたが、あなたの研究は、従来の研究と関係があったり、もしくは延長上にあることが多いはずです。そうしたときに、あなたが得た結果が、これまでの研究の中でどの位置づけにあるのか示すことはとても大切です。この議論は、後のDiscussionの中で、しっかりと行われるものですが、このResultにおいても、チャンスがあればアピールしておいても良いでしょう。

 

ここでは、データを説明するのに、単に事実を述べるというよりも、少し自分の主観を込めた表現になっています。結果は、客観的事実のみを述べるのが基本ですが、そのデータを読者にどのように読み取ってほしいかというメッセージを送ることも大切です。例えば、
As can be seen in Fig.1, the two curves are very similar.
というようにデータを紹介すれば、読者はデータの類似性を読み取ろうとしてくれるでしょう。一方で、
As can be seen in Fig.1, the two curves are noticeably different.
とすれば、データの違いに目を向けることになるでしょう。

 

Sentence7

(7) However, the modelled data were not consistent with these results for afternoon journeys.

 

筆者は、自分の研究結果の概況を述べ、新しいパラグラフを始めようとしている

 

筆者は、この文章で、より大切な議論に移ろうとしています。そのサインは、文頭にある「However」です。あなたが、より重要な議論に展開をさせたいときには、このような接続詞をうまく使い、読者にサインを送るのが有効的です。

 

Sentence8

(8) Although the mean CO concentrations modelled by TEM for afternoon journeys on foot were in line with those of Okuno et al., a striking difference was noted when each of the three peak hours was considered singly (Fig. 2).

 

筆者は、自分の特定の研究結果を他の研究と比較し、コメントをしている

 

論文では、この文章のように、様々なタイミングで、特定のデータや結果について言及し、その重要性や特徴、面白さを詳細に述べることになります。

 

ところで、ここで使われている「striking」というのは、少し砕けた表現すぎると感じるでしょうか?そんなことはありません。科学論文においても、「!」のビックリマークを付けたいときもあるでしょうが、さすがにそれはできません。ですから、そのような時には、そうした興奮を表すボキャブラリーを使います。このボキャブラリーは後のDiscussion/Conclusionの中でリストを出しますので、そちらで勉強してみてください。

 

また、ここでも、「Although」という接続詞で文章を始めています。もしも、この文章において「Although」を使わずに、普通に文章を始め、途中に「but」を用いる形で構成をしていたらどうなるでしょうか? 「But」を用いる文章では、「but」以下が主張したい内容となりますが、その文章は後半になるまで出てきません。一方、「Although」が使われれば、この「although」の節の後に、主張したい大切な内容が続くのだなと読者にサインを送ることができます。

 

Sentence9 and 10

(9) It can be observed that during the first hour (H1) of the peak period, journeys on foot resulted in a considerably lower level of CO exposure. (10) Although levels for journeyson foot generally exceeded those modelled for car journeys during H2, during the last hour (H3) the levels for journeys on foot were again frequently far lower than for car journeys.

 

筆者は、自分の特定の研究結果を詳細に説明し、コメントをしている

 

ここでは、単に結果を報告するだけでなく、それをより丁寧に説明をしています。もちろんこれはあなたの研究内容の複雑さや結果の難しさによるところですが、簡単なバックグランドの情報なども交え、説明することでより読者は内容を理解しやすくなるでしょう。例えば、研究対象の特性や研究手法の情報などです。ただし、この段階では、ここでの説明は、結果に直接関係する内容のみにとどめておいた方がいいでしょう。より幅広い、深い説明は次のDiscussion/Conclusionで行っていきます。

 

こうした結果の説明は、全ての得られた結果にする必要はありません。容易に理解できるもの、重要度の低いものには特に説明を付けなくてよいでしょう。逆に、全てに同じような説明を付けてしまうと、読者がそれぞれの結果の重要度について混乱をしてしまう可能性があります。

 

Sentence11

(11) A quantitative analysis to determine modelling uncertainties was applied, based on the maximum deviation of the measured and calculated levels within the considered period.

 

筆者は、結果の分析に使った手法について述べている

 

これは、どうしてMethodologyのところで述べなかったのでしょうか?あなたがいつも読む論文を見ると分かると思いますが、このResultの章の中に、とても多くのMethodologyの内容が含まれています。Methodologyでは、通常研究対象や手法の基本的な内容を説明し、そして、より詳しい内容、結果とリンクした具体的なMethodologyの内容は、このResultの中でしっかりと説明をします。その方が読者にとっても理解しやすいこともあり、こうした説明のスタイルが一般的となっています。

 

Sentence12

(12) Using this approach, the uncertanty of the model prediction for this study slightly exceeds the 50% acceptability limit defined by Kashima [7].

 

筆者は、自分の結果の問題点を述べている

 

筆者は、ここでは自分の研究結果の問題点を述べています。Medhodologyの所でも言いましたが、研究の問題点が大きな議論になる場合には、その点を決して無視してはいけません。その点は、しっかりと論文内でコメントし、できるだけそれがあなたの主張に影響を与えないような上手な説明の仕方をしなければなりません。もしくは、その原因を分析したり、問題の解決法を提示したりすることも良いでしょう。とにかく、問題を放置していると、あなたがそれに気が付くことができていないと思われてしまい、論文の信用性にも影響してしまいます。問題の影響を軽減する表現は、この後学んでいきます。

 

Sentence13

(13) Nevertheless, these results suggest that data obtained using TEM to simulate CO exposures may provide more sensitive information for assessing the impact of traffic management strategies than taraditional on-site measurement.

 

筆者は、自分の結果のまとめ的な評価をしている

 

こうした評価は、Discussionのなかで主に行われますが、ほとんどの筆者は、Resultの最後においても述べます。こうすることで、次の章に向けて、「結果を報告する」から「詳細を議論する」にスムーズに移行していくことができます。

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